感想 ★★★★☆
探偵ドルリー・レーンが活躍する悲劇シリーズの最後をかざる作品。
なぜ今までのように、『~の悲劇』ではなく『レーン最後の事件』としたのか、その意味が読み終わった後にわかりました。
確かにこのタイトルが適切でした。
あらすじ
元警視サムの探偵事務所に不可解な恰好をした依頼者が現われる。その依頼内容は、ある秘密が書かれた封筒を預かってほしいというもの。
納得しかねたサムは断ろうとするのだが、娘のペイシェンスがそれに待ったをかけ、渋々ながら引き受ける。
また、別の人物からは失踪した警備員の行方を捜してほしいとの依頼も受ける。その警備員はサムもよく知る元刑事ドノヒュー。
サム親子はドノヒューの捜索をするうちに、予想もしなかった大きな事件に巻き込まれていくことになる。
シェイクスピアの貴重な本のすり替え事件、これがすべての元凶で、封筒を預かってほしいという依頼も、ドノヒューの失踪もすべてが繋がっていた。
サム親子はシェイクスピアに詳しい元俳優ドルリー・レーンに相談して、この一連の事件の解決を目指す。
感想
予想外の結末などもあって、最後を飾るにふさわしい作品でした。本作にはいろいろなものが詰め込まれていますね。
トリックの趣向もさることながら、価値ある物を巡る展開は冒険小説のようでもあります。そしてペイシェンスの恋物語なんかもあって、まあ盛りだくさんです。
このシリーズは必ず順番通りに読まないといけません。前三作を読むことによって、より驚くことができるし、余韻に浸れます。
著者もそれを始めから意図してこのシリーズを作ったのではないか。遅くとも『Zの悲劇』を作った時には、間違いなくこの終わり方を考えていたはずです。
あまりミステリ史に詳しくないのですが、本作のように身体感覚を使ったトリックはそれまでにあったのでしょうか。
今では様々な形で使われていて珍しさは感じませんが、当時は凄まじい驚きがあったのではないでしょうか。
四部作を好きな順に並べると、一位が『Zの悲劇』で以下『Yの悲劇』、『レーン最後の事件』、『Xの悲劇』となります。
異論はあると思いますが僕はこの順番で面白かった。それにしても、これでレーン、サム、ペシェンスと会うのが最後だと思うと、淋しくてたまらない。
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