人気漫画、『金田一少年の事件簿』の小説版。このシリーズは漫画をノベライズしたものではなく、オリジナルのストーリーになっている。
その第三弾にあたる本作は、吹雪の山荘に閉じ込められるクローズドサークルもの。漫画として読んだ場合はまた違う感想になりそうだけれど、小説としては特に面白いとは感じなかった。
インターネット上で交流していた七人の男女が実際に会おうということになって、山奥の山荘に集まる。皆お互いのことをハンドルネームで呼び合い楽しい一時を過ごしていると、スキーの最中に遭難してしまった金田一と美雪が訪れる。吹雪で帰れそうになかったので金田一と美雪は山荘に一晩泊めてもらうことになった。
その夜、メンバーの一人が何者かに殺され、連続殺人の火蓋が切って落とされる。
小説としての深みが感じられずシナリオを読んでいるような気分になった。金田一と美雪に関しても、漫画のような生き生きとした感じが伝わって来なかったのが残念。最初の事件の時の金田一の行動も不自然。あれでは警察に連絡するのを拒んでいるように見える。登場人物全員が物語を進めるための駒になっていた気がする。
トリックに関してもミステリを読み慣れている人なら驚きは感じないでしょう。メンバーたちの過去のやり取りから金田一はあることに気づくのだけれど、その根拠があまりにも薄弱で納得しがたい。
最後に犯人が長々と独白するのもいただけない。ただでさえミステリは説明的になってしまうのに、動機なども台詞で長々と説明されると冷めてしまう。
いろいろと残念な作品だったけれど、1996年に早くもインターネットのSNSを物語にしたのは凄いと思う。様々な人気漫画の原作を手掛けている著者の着眼点は流石だ。
コメント
とっても好きな作品なのでこの評価の低さは残念。
>>1
みす様へ
読んだ当時はこう思ったようです、すみません。
この頃はミステリを読む際に、ひねくれた感情があったような気がしますね。