感想 ★★★★★
東北地方で拝み屋を営む著者の実話怪談。二つの話がセットになっており、どちらも何とも言えない不気味さと怖さがあります。
実話怪談というジャンルは、実際にあった話や、実体験を元に書かれた話と認識しているけれど、僕にはこれが実際にあった話とは到底思えなかった。
なので創作されたホラー小説として読みました。実話と思うか創作と思うかは個人の自由なのでそこは置いといて、とても面白い作品なのは確か。
ホラーが好きな人は要チェックです。
あらすじ
『母様の家、あるいは罪作りの家』
死んだ母親の霊が枕元に立って困っている。そんな相談を受けた拝み屋・郷内が体験する恐怖の数々。なぜ母親の霊が現れるのか、その原因を探っていく内にとんでもない事実が明らかとなる。
怪異の原因は山奥に佇む旧家。その一族が犯した罪、歪んだ家族関係、多発する怪現象の数々。
しがない拝み屋ではとても手に負えないような怪異が待ち受けていた。そこで郷内は何度も手を引こうとするものの、結局かかわることになってしまうのだった。
『花嫁の家、あるいは生き人形の家』
嫁いだ花嫁が3年以内に必ず死ぬ――そんな曰くのある旧家へ嫁いだ女性から相談を受け、郷内は問題の旧家へ訪れる。
実際に何代も続けて花嫁が亡くなっており、旧家の面々に話を聞きながら、原因がどこにあるのか探っていく。だが、彼らが何か隠しているのは明らかだった。
霊が見える体質も手伝って、郷内はこの一族が行う因習を探り当てる。
この一族は花嫁の生き人形を秘かにまつっていたのだ。そこまではわかったものの、花嫁が死に続ける理由まではわからなかった。
そして最後に驚愕の事態が待ち受けているのだった。
感想
こういう旧家や因習に纏わる怖い話が大好きなので、とても楽しめました。どちらも身の毛がよだつようなおぞましさがあります。
特に『母様の家』の方は、京極堂シリーズでも読んでいるのかと錯覚するほど、ドロドロした嫌さがあります。
戦後が舞台のあちらに対して、こちらは平成が舞台。平成の世でこんなことありうる? とまずそのことに頭がいった。とても現実のことは思えない。
さらにはサイキック少年が登場し、カーチェイスまで繰り広げるのだから驚かされます。これがもし実話なら、現実とは一体何だろうという気がしてくる。
そのくらい異常な世界が展開されます。そういう意味で読み応えがあります。
ただ話があちこちに飛ぶので、若干読みづらい。最後に一つに繋がる構成とはいえ、いろんなエピソードに話が飛ぶので、読みづらさを感じるのは否めないでしょう。
最後まで読むとこの構成にした意図がわかるため、難しいところではありますが。
『母様の家』はタイトルにある通り母親がテーマになっています。不気味さ、おぞましさ、怖さ、そして切なさも感じられ、一つの物語として読み応え抜群でした。
『花嫁の家』も良かった。こちらも旧家を舞台にした不気味さがあって雰囲気抜群。それに加えてビジュアル的な怖さもあります。
花嫁衣装を纏った人形は想像するだに寒気がする。嫁いだ花嫁が必ず死ぬという設定も魅力的。
そして最後には予想外の展開が待っています。こちらも良くできた完成度の高い話でした。
どちらにも共通して言えるのは、ちゃんと辻褄が合うこと。異常なこと、謎なこと、ホラーではもちろん日常茶飯事ですが、その辻褄が合いすぎると言えるかも知れません。
あえて謎のまま終わらせて恐怖を煽るやり方が、ホラーではよく見られます。
本作の場合、それこそミステリのように辻褄合ってしまうので、そこで作り物めいた感じが出てしまうかもしれません。
僕が実話と思えなかったのは、この点も大きいですね。基本的には謎のまま終わらない話が好きなので、楽しんで読むことができましたが。
あとがき
創作ホラー小説として読んだと書きましたが、怪談的な怖さもちゃんと感じられました。
幼少期の少女二人が体験する話などは、怪談のそれですね。薄気味悪い怖さを感じられます。
怖い話を探している方はもちろん、ミステリテイストなホラーが好きな人にもおすすめ。
コメント