青春音楽ミステリ『おやすみラフマニノフ』 中山七里

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感想 ★★★☆☆

『さよならドビュッシー』から始まるシリーズの二作目。物語に謎はあってもミステリ色は極めて薄く、音大に通う若者たちの苦悩と成長を描いた青春小説といった感じ。

メインのトリックは大したことなかったけれど、動機というか真相の部分で一工夫されていてよかったです。

ミステリとしての驚きを求めなければ満足できる一冊だと思う。

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あらすじ

プロのヴァイオリニストを目指す音大生の晶は、秋の演奏会に向け仲間たちと猛練習の日々を送っていた。

そんなある日、二億円相当のストラディバリウスが密室状態の保管庫から盗まれる。さらにピアノが破壊されるに至り、何者かが演奏会の中止を目論んでいることが判明。

それでも生徒たちはこの演奏会に懸けているため、中止するわけにはいかない。仲間の誰かが犯人ではないかと、疑心暗鬼が広まる中、彼らは無事に演奏会を成功させられるか――。

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感想

前作を読んだ時にも思ったんですが、ミステリの部分はおまけの印象が強い。

密室トリックのネタは短編に使われるようなものだし、調査したり推理したりする場面もあまりなくて、それほど謎を重要視しているようには感じられません。

物語を進めるためにミステリの形式を使っているだけで、著者が描きたかったのは青春音楽小説だと思う。

音大に通う学生の将来に対する不安、悩みなどは丁寧に書かれていたし、生き生きとした演奏シーンは楽しんで書いているのが伝わってきます。

文字で音楽、音を表現するのは難しそうな気がしますが、問題なく音が伝わってきます。音楽漫画を読んでいる時にもそう思いますが、漫画の場合、効果線とかキャラの表情とか使えるものはいろいろありますもんね。

小説の場合は純粋に文字だけなので、それで音を伝えられるのは凄いなあと思いました。

僕は音楽に詳しくないのでわかりませんが、オーケストラや演奏方法なども詳しく書かれています。読んでいてへえと思うことが多々ありました。

将来に悩む主人公ゆえに、先輩音楽家や年配の人たちが、彼に人生訓を語ったりする場面がけっこう多いです。

説教臭いと言わないまでも、鼻白みそうになる時が無きにしも非ず。

あとがき

ミステリ色は薄いですが、青春ものとしては楽しめる作品。ミステリ好き以外の人にもおすすめですね。

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