シリーズ二作目はホラー色が強め 『白魔の塔』三津田信三

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感想 ★★★☆☆
物理波矢多シリーズの第二弾。前作『黒面の狐』は王道の本格ミステリでしたが、今回はオカルト色が強め。ホラー作品と言っても過言ではないと思います。
ただ、それは読んでいる最中の印象で、真相を知ると景色が一変。三津田信三のミステリ作品を読んでいる人なら、何度か経験したことがあるかと思います。
本書でもそれを味わえるため、三津田作品が好きな方は買って損はないでしょう。しかし、不満に感じる面があったのも事実。
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あらすじ

灯台守となった物理波矢多は、観光地化した灯台から僻地へと転勤する。その灯台があるのは、九つの岩が聳える特殊な地形の岬で、潮の流れによっては船で接岸できない。
そのため波矢多は陸路で向かうのだが、森深き山を越える必要があった。道なき道を進む最中、波矢多は謎の白い存在に追い回される。結果、道に迷った波矢多はポツンと佇む一軒家を発見し、一晩お世話になることに。
安堵したのも束の間、住んでいたのは白い面を被る不気味な親子だった。もしや、森に潜む白い存在と何か関連があるのか……。
その後、様々な怪異を体験しながらも、波矢多は何とか灯台へと辿り着く。そして山での恐怖体験を灯台長と話す内、予想外の事実が次々と明らかになるのだった。
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感想

前作は炭坑夫で今回は灯台守。そういう職業小説としての楽しみ方が出来るのが、本シリーズのユニークな点だと思います。
本作では日本における灯台の成り立ちについて語られています。そして灯台守がかなり過酷な職業だったこともわかりました。
現代とは比較にならないほど交通の便が悪かった当時は、灯台に行くだけでも一苦労だったようで、場所によっては本当に浮世離れした孤独な仕事だったらしい。
ちなみに、本作ではプロレタリアート的な側面はありません。灯台守についての蘊蓄が語られるのみで、具体的な仕事の様子なども描かれていません。
物語についてですが、メインは山での怪異譚ですね。まず波矢多の体験が描かれ、それから灯台長も過去に同じ体験をしていたことが判明します。
そういう構成ゆえ、同じシーンを二回読んでいるような気分に成り、だんだん退屈に感じてきます。
本書の試みを考えるとこうするしかないため、仕方ないともいえます。それでもやはり冗長に感じるのは否めないですね。
それと、もう一つマイナスに感じた点があって、怪異が怖くないことです。謎の存在に追いかけられたり、目撃したりというのは、怪談話ではよくありますからね。
ラストでいろんなことがひっくり返るとはいえ、読んでいる最中は冗長に感じるし、怖がることもできませんでした。

あとがき

意図していることはとても面白かったです。でも上に書いたマイナス面を帳消しに
できるほどではなかったですかね。基本的には満足です。次回作も楽しみだ。

コメント

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