感想 ★★★★☆
作品の雰囲気が非常に良かったです。
時代は現代ではなく、第二次世界大戦の傷を色濃く残している、1950年代に設定されています。
それだけでも淀んだ空気感なのに、舞台となっているのは重度の精神病患者が収容されている孤島。しかも、嵐までやってくる。
不穏な世界観が見事に構築されていました。
あらすじ
精神病の犯罪者を収容している孤島の病院で、子供三人を殺した女性患者が行方不明になった。
この事件を調査するために、連邦捜査官のテディとその相棒チャックが訪れる。
女性患者は謎の暗号を残していたので、テディは暗号解読を試みつつ、病院職員や患者に聞き取りをして捜査を進める。
テディがこの事件を担当したのにはもう一つの目的があった。
彼の妻を殺した犯人がこの病院にいるのだ。女性の失踪事件を捜査しつつ、テディは己のトラウマとも向き合っていく。
そして最後には衝撃の結末が待ち受ける。
感想
この作品は人によって評価が変わりそうです。こういう結末を蛇蝎の如く嫌う人が存在するので、万人受けする作品ではないかも。
僕はこのやり方はありだと思っているので普通に楽しめました。しかし、真相にはうすうす感づいてしまいました。
それと、女性の失踪がミステリとして魅力的で、いったいどういうトリックを使ったのだろうと、期待していただけに少々残念ではありました。
この作品は主人公のための物語でそれ以外の何物でもないです。
主人公テディは、戦時中に数々の勲章をもらうほどの軍人で、多くの人間を殺してきた過去があります。
そして妻を亡くした喪失感に押し潰されそうになっている。本作はテディの再生物語です。
ミステリの設定を使っていますが、それは物語を進めるための装置に過ぎません。
トリックであっと言わせることよりも、テディを通して過去を受け入れ今を生きる――そんな人生のテーマを伝えることが主題なんじゃないかと思いました。


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