
感想 ★★☆☆☆
シリーズ五作目となる本作は、これまでと少々読み味が異なります。普通の警察小説という印象が強く、あまり面白く感じなかったです。
こういう警察小説ならもっと重厚な話を書く作家が、他にたくさんいるでしょうね。あえて本書を読む必要性を感じません。
シリーズを重ねるにつれ、初期にあったような本格要素がだんだん薄れていて残念。
あらすじ
カーソンとハリーが海辺で余暇を過ごしているところに、不審なボートが漂流して来る。調べてみるとそこにはなんと赤ん坊がいた。
危険な状態だったが、二人の懸命な処置によってかろうじて一命を取り留めた赤ん坊は、病院へと搬送される。愛着が湧いたのか、それからハリーは頻繁に病院に通うようになった。
そんなある日、白人至上主義の男が突然病院に侵入し、例の赤ん坊の誘拐を試みる。ボートに乗せられていた事といい、この赤ん坊には何か秘密があるようだ。
一方その頃、もう一つ妙な事件が立て続けに発生していた。銛で体を貫かれた死体、極右の説教師のSMプレイ中の変死。
カーソンとハリーが捜査を続けると、誘拐事件と変死事件をつなぐ糸が見えてくるのだった。
感想
前作『ブラッド・ブラザー』を読んだ人は、カーソンの兄ジェレミーのその後が気になるところですが、今回は登場しません。
それどころか兄のことに触れられてすらいない。まるで始めからそんな人物などいなかったかのようで、そこに若干不自然さを感じました。
もう一つ不自然な点があって、それはカーソンが恋愛をしないところ。これまではシリーズごとに新しい恋人を作るのがお馴染みになっていたため、物足りないというか、肩透かしを食らった気分。
まあ、これが伏線になっていると言えなくもないんですけどね。
二つの事件が交わる構成については、唸りを上げるほど巧みとは思わなかったです。
事件について
繋がりが明らかになっても、へえ、そうなんだという感じ。そもそも事件自体の魅力が乏しかったように思う。
説教師の死体にはこのシリーズ特有のグロさはありました。なのでサイコミステリの雰囲気は健在です。結末に関しては普通ですかね。割とよくある理由だと思います。
読み進めている最中、あれ、カーソンってこんなキャラだっけ? と違和感を覚えました。破天荒を通り越して、ただのどうしようもない奴みたいになっていたのです。
だから、これは何かあるだろうと注意していたら案の定何かあって、真相にある程度予想がついてしまいました。
終盤で二転三転するとはいえ、見当がつく二転三転ゆえに、カタルシスを得られなかった。
個人的にはシリーズの中で一番つまらなかったですね。謎の組織とかが嫌いじゃないだけに、がっかり感が強かったです。


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