『ダンデライオン』 河合莞爾

dandelion

感想 ★★★☆☆

捜査一課の刑事が主人公の警察小説。デビュー作の『デッドマン、『ドラゴンフライ』、に次ぐシリーズ三作目となる本作は、少し期待外れ感が否めないです。

とはいえ、それは僕の期待値が高かったからで、普通に楽しめる作品ではあります。

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あらすじ

密室状態のサイロ(牧場にある肥料を保管するための小型の塔)で、ミイラ化した女性の遺体が発見され、捜査にあたることになった鏑木班。

被害者が16年前に死んだこと、そして鏑木班の一員で若手刑事の姫野が、被害者と顔見知りだったことが明らかになる。

彼は幼い頃に父親を殺されており、その事件との関連が見えてきたところで、今度は高層ホテルの屋上で焼殺事件が発生。

すべてが一本の線でつながった時、ひた隠しにされてきた真実が明らかになるのだった。

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感想

本作の主役は鏑木ではなく姫野。彼のパートと被害者の日向咲のパートが交互に語られます。密室殺人、過去の未解決事件、公安、謎の童話と盛りだくさんな内容。

このシリーズは本格ミステリと警察小説が合わさったようなところが魅力ですが、本格要素である密室事件はそれほど面白いトリックではなかった。

特異な密室状況だっただけに残念。伏線がちょっと丁寧すぎた気もする。焼殺事件にいたっては取るに足らないレベル。

警察小説といえば公安と言いたくなるほど、この組織はよく登場します。本作においては、日向咲が所属していたサークルが怪しいということで、彼らに監視されていました。

このことが重要な意味をもっていて、彼らのような存在を上手く利用したストーリーになっています。

そして被害者の日向咲ですが、彼女は一卵性の双子と最初に提示されます。ミステリで双子が登場すれば、人物の入れ替わりを想像するのは当然ですね。

本作はその部分において工夫が凝らされていました。結果だけを切り取ると何だよそれ、となりそうですが、よく考えられていると言えるでしょう。

読者が入れ替わりを想像することを前提に書かれているのが窺えるからです。

あとがき

このようにいろんな要素が詰め込まれており、特に破綻もありません。でも凡庸な作品という印象が強いですね。

左翼的な存在を描いたものなら、もっと真に迫るものがあるだろうし、本格としてはトリックの面白味にかけます。時が経っても読み継がれるような突き抜けた力は感じられないですね。

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