「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」 フィリップ・K・ディック 

感想 ★★★★★

SF小説の傑作との呼び声が高い本書。確かにそれも納得の面白さでした。

まず、本物の動物を飼うことがステータスとなっているのがいい。これがなかったら全然違う感想になっていたはずです。

電気羊を飼っていた主人公のデッカードが、本物の動物に憧れを抱く描写。愛情と欲望がわかりやすく表現されていて、そこに人間らしさを感じました。

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あらすじ

デッカードは動物を購入するための資金を得るために、賞金首であるアンドロイドの抹殺に乗り出す。

何の感情も抱かずアンドロイドを抹殺していた彼だったが、次第に人間とアンドロイドの違いがわからなくなり苦悩する。

彼らは見た目も人間と同じで、自分で物事を考える意思も持っているのだ。葛藤を抱きつつも仕事を続けるデッカードは様々な困難にぶつかる。

 

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感想

読む前に僕は、人間とアンドロイドの戦いを描いたアクション小説かと思っていました。でも、それは間違っていました。

この小説は人間とは何なのかを探究する哲学的な物語。

特に印象に残ったのは、アンドロイドが蜘蛛の足を切断していくシーン。

この世界では、本物の蜘蛛も貴重な存在とされていて、蜘蛛を偶然発見したイジドアというキャラはとても喜ぶ。

だが、足が四本だとどうなるのだろうという疑問を解決するために、アンドロイドが一本ずつ切断していく。

そのアンドロイドに惚れていたイジドアが、やはり人間とアンドロイドは大事なところでわかり合えない、と悟るこのシーンが切なくて印象的でした。

アンドロイドとの戦いのシーンは、何のスリルもなくあっさりと片付きます。個人的にはそこがちょっと物足りない気がした。

そういう面白さを省いたのは、アクション小説ではないということの表れでしょうか。

著者であるフィリップ・K・ディックは、生命についての小説を書きたかったのでしょうね。

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