『ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳

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感想 ★★★★☆

レイモンド・チャンドラーの名作を村上春樹が訳した新訳版。けっこう長い物語でしたが、楽しんで読むことができました。

あとがきに村上春樹のチャンドラー論が原稿用紙90枚分ついていて、お得感がありました。物語もさることながら、このあとがきも面白かったです。

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あらすじ

私立探偵のフィリップ・マーロウはある日、億万長者の娘シルヴィアの夫であるテリー・レノックスと知り合う。何度か酒を酌み交わすうちにマーロウはテリーに惹かれていき、二人の間に友情が芽生える。

そんな矢先、マーロウの事務所にテリーが訪れ、空港まで車で送って欲しいと頼む。実はその時テリーの妻シルヴィアが殺害されていたのだ。テリーの無実を信じてマーロウは言われた通り送ることにした。

それからマーロウは警察から厳しい取り調べを受け、その時にテリーが遺書を残して自殺したことを知らされる。だが、マーロウは彼の無実を信じて疑わない。

被害者が億万長者の娘ということで、様々な圧力がかかる中、マーロウは誰にも屈することなく、己の信念を貫いていく。

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感想

本書の魅力は、主人公のフィリップ・マーロウのキャラによるところが大きいと思います。彼は暴力や権力でどんなに脅されても決して屈せず、逆に相手を皮肉ったりするようなタフな男なのです。

その皮肉り方が軽妙でボキャブラリーに富んでいて面白かった。

そしてもう一人の主人公とも言える、テリー・レノックスもキャラクターが立っています。大富豪の娘と結婚して酒に溺れている彼ですが、過去には辛い経験をしていて、どこか陰のある雰囲気。

物語の焦点はシルヴィアを殺したのは誰かということ。本当にテリーが殺したのか、それとも誰か別の人物なのか。事件の裏に何か陰謀が隠されているのではないか。

物語が進むにつれ次第に明らかになってきます。最後に驚きも用意されていて、ストーリーもよかった。

僕はレイモンド・チャンドラーがどういう人物か全然知らなかったので、あとがきが非常に興味深かったです。

彼は第一次世界大戦に従軍して、戦地の最前線に配属された過去を持ちます。戦争が終わってからは石油会社に勤め、副社長まで上り詰めています。

それからアルコール依存症になって会社を首になり、四十四歳になってから本格的に作家を目指し始める。

凄い経歴の持ち主ですね。作家になってからも、食えない時はハリウッドで脚本なんかも書いていたようです。

その時にヒッチコックやビリー・ワイルダーなど、映画界の大物とも一緒に仕事をしていたという話。いやはや驚かされました。作品だけでなく著者自身も魅力的な人物ですね。

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