『セーラー服とシャーロキエンヌ』古野まほろ あらすじと感想

感想 ★★★☆☆
世界的に最も有名な推理小説といえば、コナン・ドイルが記したシャーロックホームズシリーズで間違いないでしょう。
本作はそのシリーズへの愛情がつまったオマージュ的な作品。四つの短編で構成されており、それぞれの話はホームズの短編が元ネタになっています。
古野まほろの独特な世界観でも、無理なく上手に設定が生かされていて、真相には著者独自のアレンジが加えられています。
その試みはよかったと思いますが、なにぶん癖が強いもので読者を選ぶかもしれません。
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あらすじ 

『獅子座連盟』

毎日決まった時間、ある部屋にいるだけで高額の報酬がもらえる不可解なバイト。その目的はいったい何なのか調査する。元ネタは『赤毛組合』
 

『赤いルピア』

ある人物に贈答するため高価なスイカを用意したのはいいが、いざ割ってみると中からインドネシアの紙幣が一枚出てきた。どうしてこんな物がスイカの中に? 元ネタは『青いガーネット』
 

『だんだらの紐』

美人姉妹のもとに縞模様の紐が何本も送られて来るようになった。長さも太さもバラバラで、何を意図しているのかまったくわからず、不気味で仕方がない。実害がなかったため気にしないようにしていたある日、ついに不幸な出来事が――。元ネタは『まだらの紐』
 

『六つの家康公』

稀代の彫刻家が製作した六体の彫像が、何者かによって次々と破壊される事件が発生。さらに、殺人事件まで起きて事態は混迷を極める。元ネタは『六つのナポレオン』
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感想

タイトルに〝セーラー服〟とついているため、てっきり『セーラー服と黙示録』シリーズの一つかと思いきや、そのシリーズに登場するキャラは出て来ませんでした。
日本帝国という架空の世界観は共通していますが、正確には天帝シリーズの番外編という位置づけになるらしい。僕は天帝の方は未読だけれど、調べてみるとどうやらそちらに登場するキャラが多数いるようです。
なお、本作の世界観はかなり特殊なので、予めどれか読んでおかないと、もしかするとすんなり話に入って行けないかもしれません。
 
どの作品も基本的に、魅惑の女探偵・穴井戸栄子のもとに相談者が訪れ、それぞれが抱える問題を彼女とその助手・古野まほろが解決するという流れ。
探偵小説の王道の形ですね。それでいてキャラクターは個性的。
二人とも高校生で、穴井戸栄子はシャーロックホームズのコスプレをする巨乳の破天荒娘。かたや古野まほろは、推理力抜群ながら穴井戸の下僕に甘んじているM気質の男。
 
栄子嬢は観察眼はホームズ張りに優れているが、論理的思考は苦手なご様子で、まったく頓珍漢な推理を披歴する。
それを古野まほろが正して――そうと気づかれないように誘導して――事件を解決へと導く。どんでん返しの連続とは違うが、それに似た面白味がありました。
 
そんな二人の掛け合いは終始ユーモラス、換言すればライトノベルテイストともいえる。下ネタが満載で、ガンダムやエヴァなどのアニメネタも、ところどころで挟んできます。若い読者を意識しているのでしょう。
 
土台の部分はラノベチックながら、謎と解決部分においては安定してるというか、普通というか、ちゃんとミステリしています。ただセーラー服シリーズと比べると物足りなかったです。
良し悪しは置いておくとして、過去作には意表をついた奇抜さがありました。でも、本作はどれも大人しかった。一番出来がよかったのは『だんだらの紐』ですかね。『獅子座連盟』も嫌いじゃない。

あとがき

コミカルなキャラのやり取りが好きな人は、特に楽しんで読めると思います。ミステリとしての驚きや意外性はさほどありませんが、手軽に楽しめる良作でした。
ラノベテイストなので若い人にもおすすめですね。
 

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