『ふたりの距離の概算』 米澤穂信

runners

感想 ★★★☆☆

古典部シリーズもこれで五冊目となり、一年生だった古典部のメンバーが二年へと進級しています。

そして新たに女子の新入部員を迎えて、彼女とも上手くいっていたのだが、なぜか突然辞めると言い出します。

学校行事のマラソン大会の最中に、その理由を折木が推理するのが大筋で、その合間にいくつかのエピソードが挟まれています。

日常の謎としてなかなかの仕上がり具合でした。

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あらすじ

本作は五章に別れており、各章では新入部員が入部してからのエピソードが、回想として語られます。

『入部届はこちら』

新入部員の大日向が入部するきっかけとなった出来事。新入生を勧誘する部活のイベント会場で、不可解なことをしている部を発見した折木と千反田が、推理合戦を繰り広げる。

『友達は祝われなきゃいけない』

大日向を加えた古典部の面々が、折木の誕生日を祝うために彼の家に遊びに行く話。誰も知らないはずの折木の家に、どうしてスムーズに辿り着けたのかが問題に。

『とても素敵なお店』

大日向の知り合いが喫茶店をオープンすることになり、そのモニターとして店を訪れる古典部一同。まだ看板ができていないことにかこつけ、店名当てゲームを始める。

『離した方が楽』

大日向が辞めると言い出した状況が詳しく語られる。

『ふたりの距離の概算』

辞めると言い出した理由が明らかになる真相編。

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感想

折木たちの走るマラソン大会の距離が、なんと二十キロということで、まず驚かされました。

二十キロといえばかなりの距離。普段からトレーニングしているランナーなら、大したことないかもしれないけれど、一介の高校生からしたら地獄にも等しい長き道のり。苦行以外の何ものでもない。

この小説を読んでいると、自分の高校時代を思い出しました。 僕の母校は十キロだったのですが、それでもかなり長くてしんどかった。

最初と最後だけ本気で走り、それ以外は流すか歩いていたように記憶しています。でも、こういうイベントは学生時代ならではのもので、いい思い出になりますね。

もう何年も昔の話なのに、今でもその時の風景を覚えています。

謎解きについて

さて、今回の新入部員の退部騒動には、千反田が深く関係しています。だから省エネ主義の折木が、マラソンの最中にもかかわらず、頭まで働かせて真相を探ろうと動き出します。

大日向が辞めたいと思う兆候がなかったか吟味したり、わざとゆっくり走ってメンバーと話をしたりと、省エネとは真逆の行動力を発揮する。

各エピソードには日常の謎らしさがあったし、大日向がどんな人間なのか小出しにして、最後の真相につなげるのも上手です。

ただ、うーんと思うところがないでもない。

親友や身内でもやったらダメなことを、あるキャラクターがやるのに、真相編でそんなの大したことじゃないみたいに言うのはどうでしょうか。

僕は違和感を覚えました。現代の感覚からすると明らかにマナー違反。それをやった理由にもちょっと納得しかねます。

これはキャラクターに対するイメージにも関わってくるので、何か別の行動にした方がよかったのではと感じました。

あとがき

上記のように若干気になる点がありましたが、基本的には満足の一冊。学生にはもちろん、学生時代を思い出したい方にもおすすめです。

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