警察小説感想『隠蔽捜査』 今野敏

感想 ★★★☆☆

今回読んだのは現代を舞台にした警察小説、『隠蔽捜査』。よくある警察小説では、何らかの事件が起き、その事件を捜査する過程を描きますが、本作は少々趣が異なる。

主人公を現場の捜査官ではなく官僚に設定して、事件が起きたときの警察上層部の動きを追っています。なかなか新鮮で面白く読むことができました。

しかし、家族の起こした不祥事により主人公が葛藤するところで、僕は少なからず違和感を覚えました。

主人公はほんの一握りの人間しかなることのできないエリート中のエリート。そんな人間がその判断をするかなあと思ってしまった。

警察のエリート官僚が、少年漫画の主人公のような正義感を持っていることに、どうしても違和感を覚えてしまう。

自分の身を滅ぼす不祥事をもみ消さず、馬鹿正直に公表するのがエリート官僚らしからぬ行動に思えたのだ。

もちろん、小説の主人公なのでそういった正しい判断をさせるべきでしょう。それは間違いない。でも、僕はちょっと納得いかないものを感じた。

文章は平易で読みやすかったです。悪く言うと少し淡泊。本作は警察小説好きの大人向けですね。

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