少年が主人公でファンタジー、おまけにバベルときたものだから、異世界を旅する冒険ものかと思いきや、そういうエンタメ小説とは全然違いました。
どちらかといえば純文学に近い印象を受けました。
あらすじ
そんな窮屈な世界を生きる14歳の冬人は、心に傷を抱えており、保健室登校をしていた。父親は仕事人間で母親はヒステリック。
同年代の友達がいないどころか、苛めまで受けている始末。とても孤独な日々を送っていた。
老医師の施す治療は独特で、ある種の催眠療法といえた。治療の最中、冬人は異世界に居た。
神殿を思わせる建物で、自分とかけ離れた容姿の古代人たちと交流を重ね、気を許せる友達もできる。これらは自分の深層心理が生み出した夢だと冬人は考えていた。
たが、実はその裏で人類の存亡を脅かすとんでもない計画が刻一刻と進行していたのだった。
作り込まれた世界観
他にもビールに関する蘊蓄やメソポタミア文明、シュメール人について知らないことも多く、へぇと思いながら読みました。
ストーリー展開
冬人と吾郎、二つのパートが交互に進んで行き、最後に一つに交わり謎が明らかになります。終盤はスパイ小説めいたスピード感ある展開となります。
冬人と吾郎、二人とも他者との係わりが乏しく会話が少ないため、地の文で内面がしっかり描かれています。それによってキャラクターの心情に深く迫れるようになっています。
こんな風に地の文だけで進められるのは、筆力がある証拠ですね。
キャラクターについて
これは王道過ぎるとしても、立ち位置的にはヒロインなのに、全然からんでこないから逆に気になってしまいました。あまり登場しないのが勿体なく感じましたね。
あとがき
境遇の違う二人の少年の友情を描いた、爽やかで好感度の高い物語でした。十代の若者から大人まで、幅広い年齢が楽しめます。純文学的なところがあり、家族小説でもあるので、大人の方が楽しめるかもしれませんね。
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