感想 ★★★☆☆
タイトルと装丁からもわかる通り、『不思議の国のアリス』の世界観を下敷きにした話。不思議の国のパートと現実世界のパートが交互に語られていきます。
著者はもともとホラー小説でデビューした作家で、多くのホラー作品を書いています。
本作ではその特徴がいかんなく発揮されており、猟奇的な描写が多々あるため、そういうのが苦手な人には向いてないかもしれません。
あとがき
大学院生の栗栖川亜理は、自分が不思議の国の登場人物になった夢を毎日みるようになった。
その世界の住人は変人ばかりだが、決して夢とは思えないほどのリアリティ。ともすると現実の方が夢に感じるくらいだった。
その不思議の国でハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見た翌日、亜理が大学へ行ってみると、玉子という名前の研究員が墜落死していた。
その後も夢の中で誰かが死ぬと現実世界でも誰か死ぬという現象が続く。
不思議の国で容疑者にされた亜理は、同じ体験をしている同学年の井森と共に、この現象の解明へと乗り出す。
感想
いろいろなアイデアが詰め込まれていて、ミステリとしての面白さを感じられます。こういう不思議な世界観も好きなので満足できました。
ただ、カタルシスを感じられるほどではなく、結末については半ば予想できてしまいました。そこまで斬新なトリックというわけではないと思う。
大きな転換を一つで終わらさなかったのと、こういう入り組んだ話をわかり易くまとめている点が上手いです。
文章に関しては首を捻りたくなる部分がありました。小林泰三ってこんな文章だったかなあと戸惑ったくらい。
会話だけで進めていくのはわざととしても、全体的にセンテンスは短いし、想像力を刺激されるような巧みな表現もなかったです。
残酷描写については、不思議な国の不思議さを助長するために、あえてグロくしていることが窺えます。その証拠に現実世界では簡素な描写にとどめています。
でも、最後の場面はやりすぎでしょう。あそこまで徹底する意味はいったいなんなのか。もうすべて終わった後だから、なんの必然性もない。
別に怖いと思わないし、気分もよくならないし、悪趣味にすら感じました。これは不必要だったと思いますね。
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