『ヨハネスブルグの天使たち』 宮内悠介 

感想 ★★★☆☆

第149回直木賞候補に選ばれたSF短編集。本書には五つの話が収録されていて、どの作品にもDX9というアンドロイドが登場します。

世界5都市を舞台とした各短編は、いずれも戦争との関わりが深い。

結局何が言いたかったのか今一つわからなかったけれど、ハードボイルドテイストであり、楽しんで読むことができました。

独特な世界観が構築されていて雰囲気があります。退廃的な雰囲気とSFが好きな人にはおすすめ。

一番面白いと思ったのは『ジャララバードの兵士たち』。

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あらすじ

『ヨハネスブルグの天使たち』

スラム街となったヨハネスブルグに住む少年少女の話。主人公のスティーブは車泥棒などをして生計を立てていた。

彼が住むホームレスの住処となったビルは、もともと日本企業の実験場所で、DX9の落下耐久テストを行っていた。

日本企業が撤退してからも実験は継続され、ビルの中庭をDX9が雨のように降っている。

ある日、スティーブはその中の一体と目が合う。そのアンドロイドに感情があるのではないかと考えたスティーブは交信を試み、無限に続く落下テストから救い出そうとする。

『ロワーサイドの幽霊たち』

9.11同時多発テロをテーマにした作品。
もしかしたらネタバレになるかもれないので詳しいことは割愛。

『ジャララバードの兵士たち』

紛争地アフガニスタンを旅するルイは、米軍兵士ザカリーに護衛されながら移動している最中に、殺人事件と遭遇する。

殺されていたのは米軍の戦争犯罪を調べる調査官。成り行きで事件と関わったルイとザカリーは、近くの村で村人全員を虐殺する事件があったことを知る。

『ハドラマウトの道化たち』

イエメンでの覇権争いの話。ゲリラ組織を支援する米国は部隊を送り込み、この地を実効支配している新宗教を叩こうとしていた。

どちらもDX9を戦争の道具として使っており、戦いは拮抗する。

『北東京の子供たち』

団地に住む中学生二人の青春小説といった感じ。誠と璃乃はDX9に自らの人格を投影して戯れる大人たちに悩んでいた。

その行為には麻薬のような効果があり、精神を病んだ璃乃の母親はそれにはまっていた。璃乃から相談された誠は、一計を案じてその行為を止めさせようとする。

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