『おれの中の殺し屋』 ジム・トンプスン

manto

感想 ★★★☆☆

1952年にアメリカで出版された作品。映画化もされており日本では2011年に『キラー・インサイド・ミー』というタイトルで公開されました。

著者のジム・トンプスンはノワール作品を多く書いている作家として有名。そこで今回は代表作と言われている本作を読んでみました。


噂で聞く通りなかなかきつい内容でしたね。気持ちが沈んでいる時や、ストレスがたまっている時などには読みたくないタイプの作品。

もしそんな状態で読んでしまうと、さらに落ち込んでしまうか、あるいはこの残忍な主人公にシンパシーを感じてしまうかもしれない。それはとてもまずいことだ。

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あらすじと感想

この作品は主人公の一人称で語られます。主人公のルー・フォードはアメリカの田舎町に勤める保安官。彼は暢気でお馬鹿な人間を演じており、街の人たちから好感をもたれています。

でも実はとんでもなく冷淡な人間で、自分にとって邪魔な人間を排除することに、何の感情も抱きません。真性のサイコパスなのです。

読者はそんな彼が犯行を重ねていく様を、すぐそばで見ていくことになるため、否が応でも胸糞の悪さを感じてしまう。

なぜそれほど不快に思うかというと、彼は自分を信頼している人間を、まるで虫でも殺すかのように淡々と殺していくから。

被害者たちは最後の最後までルーがそんな人間だと信じようとせず、これは何かの間違いだと思い込もうとします。その姿が健気で痛ましくて読んでいてつらくなる。

苦しまないようにひと思いに殺すならまだしも、彼は楽しみつつ殴り殺したりするのです。

そうやって次々と犯行を重ねるも、自分が捕まらないように策を練っているし、日頃の行いがいいのでみんな彼のことを疑わない。

彼は頭が良いという設定ですが、犯行はとても杜撰で、これで逃げおおせてしまうことに少し不満を感じます。

昔の田舎町が舞台ということを考慮すると、まあ、こういうこともあり得るかと納得できるものの、現代の感覚ではとても頭の切れる男という印象は受けません。

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あとがき

読み易い文章でさくさく読み進められるし、共感できないとはいえ、ルーの考え方や心理には特徴があって面白いです。良い悪いは別にして、キャラクターとして魅力があるのは確かでしょうね。

終始胸糞の悪さを感じながらも、だんだんルーは追い詰められていって、意外にも読後感はそれほど悪くなかったです。

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