警察小説感想 『第三の時効』横山秀夫


感想 ★★★★☆

『第三の時効』は表題作を含む六篇を収録した短編集。各篇とも本格ミステリのような奇抜なトリックや、あっと驚く結末が待っているわけではないです。

何か謎があって、警察の捜査によって次第に明らかになり、最後に納得のいく結末を迎えます。その捜査の過程を楽しむのが警察小説の魅力ですね。

リアリティがあって駆け引きが面白い小説

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感想

横山秀夫は『陰の季節』で松本清張賞を受賞してデビューしました。高品質な警察小説を何作も書いており、横山秀夫といえば警察小説というイメージがあります。

この方は新聞記者出身ということもあり、的確な文章で書かれていて読みやすい。 大仰なレトリックは使わず、必要な文字だけで表現された硬質な文体。

内容の方は、捜査一課の三つの班が主な登場人物となります。笑わない男・朽木率いる一班、冷酷な楠見率いる二班、野生動物なみの勘を持つ村瀬率いる三班。

それぞれの短編では、この三つのうちのどれか一つの班が主役となり物語が進行します。各班長は共に野心的で、一癖あるものばかり。

取り扱う事件も一筋縄ではいかないものなので、いったいどういう結末を迎えるのだろうと、最後まで興味をそそられます。

刑事の仕事がどういうものかきちんと描かれているし、それぞれの班の対立や駆け引きなども登場します。人間関係にリアリティーがあって、このへんは企業小説のような面白さもあります。

普段ミステリを読まない人でも、本書は楽しんで読めるでしょう。文句なく人におすすめできる作品。
 

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