感想 ★★★★☆
〝守り人シリーズ〟は言わずと知れた大人気のファンタジーシリーズ。
その第1作目となる本書。なるほど、人気になるのも頷けるクオリティでした。
最初は今一つ世界観に入っていけなかったのですが、途中からは問題なく楽しめました。これぞファンタジー、まさに王道といった作品。
多くの後進作家がこの作品から影響を受けているのでしょうね。
あらすじ
女用心棒で槍の達人であるバルサは、川で皇太子が溺れかけている所に遭遇する。そしてバルサのおかげで皇太子・チャングムは一命を取り留めた。
バルサは都で歓迎を受け、その際に母親である妃からチャングムを預かって欲しいと依頼される。チャングムは体に不吉な何かを宿しており、父である帝から命を狙われているとのこと。
チャングムを預かることになったバルサは、帝からの刺客から彼を守りつつ、旧友の元で善後策を協議する。
チャングムに宿ったのは何なのか、これからどうすべきか。
それらを探る内、思いもよらぬ事実が判明し、さらなら困難と立ち向かうことになるのだった。
感想
本書はもともと児童書として書かれたらしく、読者は女性を想定していますね。それもあって、ミステリばかり読んできた、いい年した僕はなかなか物語に入っていけませんでした。
それでも読み進める内に、だんだん物語に引き込まれました。
基本的な筋立てが王道で、ワクワクする要素が至るところにあります。まず、凄腕の用心棒が子供を守って逃亡するのが魅力的。
立場の弱い者を守っての逃亡、戦い。これらの要素は小説に限らず、映画、漫画、アニメなど様々な作品に見られます。
それからバルサが瀕死の重傷を負ったり、チャングムを修行するシーンがあったりと、面白い物語に共通する要素がちゃんとあります。
ラスボスとしてこの世のものではない化物が登場し、敵と手を組む展開も熱い。これは人気が出るはずだと、納得しました。
児童書として書かれたにしては、設定が凄く作り込まれていて、そこが意外でした。
〝この国は移民が築いた国でもともとは先住民がいた〟〝その先住民の文化が忘れ去られようとしている〟など。
この辺りの事情がストーリーに綿密に組み込まれていて、とても子供向けとは思えない重層的な世界観になっています。
子供向けだからと簡素にせず、これだけ作り込まれているからこそ、人気になったのでしょうね。
最後の化物との戦いは純粋に面白かったし、冒険ファンタジーとしての完成度が高かったです。
あとがき
もともと児童書として書かれたと考えれば何の不満もありません。あえて挙げるとすれば、優し過ぎることでしょうか。
戦いで傷ついたりはするものの、誰か死んだりすることはないです(病気で亡くなる人はいます)。
あれだけの化物と戦っておきながら、これだけの一大事でありながら、誰も悲惨な目に遭わない。そこでリアリティというか、劇的なドラマ性が薄れるかもしれません。
刺激を求める人が読んだ場合、温く感じる可能性もあります。でも、子供向けに書かれたものだから仕方ないんですけどね。
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