ファンタジー巨編 『図書館の魔女』感想 後半

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後半になると、いよいよ大国ニザマの思惑が明らかになります。マツリカに対し手練れの刺客が送り込まれたりと、物語が本格的に動き出す。

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あらすじ

後編でも序盤の方は書物や言葉に関する蘊蓄が開陳されます。

そして、それと同時に新たに仲間に加わった衛兵たちの紹介がされるという感じ。この先の展開において、彼らは欠かせない存在となります。

後編での最初のターニングポイントは、マツリカへ刺客が送られてくるシーン。
マツリカ、キリヒト、そして衛兵たちも警戒する中、刺客の巧妙な手管によってマツリカは致命的ともいえるダメージを負ってしまう。
敵も一筋縄ではいかない相手と象徴されるシーンで、物語が俄然面白くなります。
第四部に入るとニザマの狙い、ニザマという国の情勢が明らかになる。

ニザマには二つの勢力があって、一つは古くから続く皇帝派。もう一つは宰相ミツクビをトップとする官僚組織。
実際の政治はミツクビたち官僚組織が行っており、皇帝は隠居状態に等しかった。
ニザマの宰相ミツクビは、すべての権力を手中に収めるための計画を練り、実行に移していた。
と同時に、海峡地域の盟主である一ノ谷の国力を削ぎ、ニザマが覇権を取ることを目論んでいたのだった。
そこで邪魔者となる一ノ谷のマツリカにちょっかいを出していたのである。
目的を達成するためにミツクビがとった戦略。それは大国同士の全面戦争ではなく、第三国を嗾け、戦争させることだった。そしてお互い疲弊したところを突こうという手口。
マツリカはその戦争を回避するために、起死回生の策を練るのだった。
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感想

物語が動き出してからは見所満載でした。マツリカはずっと高い塔に籠もっているのかと思いきや、キリヒトや衛兵と共に、自らも敵の本拠地に乗り込みます。
そこで行われる交渉術、そして秘策も見事なもの。前半で登場したアレが、まさかこんな重大な役割を担おうとは思ってもみなかったので、驚きました。
そういう頭脳戦もありつつ、バトル漫画さながらの刺客との戦闘もあって、息つく暇がありません。敵の能力、設定も作り込まれていて興味深い。
そんな具合で物語の起伏に富んでいるため、終始飽きずに読み進めることができます。しかし、そうは言っても冗長に感じる部分もありました。
特にラストの後日談的なところ。丁寧に描かれているともいえますが、個人的にはもう少し短くまとめて欲しかった。

物語を通しての感想

総ページ数が1500ページくらいある大長編でした。

長いなあと思う部分もあったものの、結果満足。読んで良かったです。詳しい内容を知らないまま、評価だけを信じて読み始めましたが、大正解だった。評価の高さに偽りはありません。
詐術を駆使した頭脳戦はもちろん面白かったですが、凝った設定の刺客にも興味を惹かれました。
まさかこんな感じの戦闘シーンがあるとは予想していなかったため、嬉しい驚きだった。
鬼のような筋骨隆々の巨人、人の心をいのままに操る傀儡師、ある意味最強ともいえる疫神、深山を跋扈する化物じみた部族のシユウ、それぞれ良く練られていて心躍りました。
こういう魅力的な敵が出てくる話が好きなんですよね。
身体能力が物をいうこれらの敵との肉弾戦では、キリヒトが大活躍します。キリヒトとマツリカ、両方にちゃんと活躍の場ある点もよく考えられていると思います。
本作『図書館の魔女』は、静と動、二つの戦いを描いた壮大なファンタジー。現実逃避して作品世界に没入したい時なんかにおすすめです。

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