ジブリ作品の制作秘話がわかる教科書シリーズの第四弾は『火垂るの墓』。高畑勲監督がメガホンをとった『火垂るの墓』は宮崎駿監督の『となりのトトロ』と同時上映されました。
本書を読むと二本同時に製作することの難しさがよくわかりました。そしてこの映画に対する監督や原作者の思いも知ることができます。
本書は3つのパートで構成されています。
パート1 映画『火垂るの墓』誕生
ここでは監督の高畑勲、プロデューサーの鈴木敏夫、原作者の野坂昭如が作品について語ってています。
企画から完成までの経緯とそれぞれの思いが窺えます。それと日本史研究家の與那覇潤氏が評論を寄せています。
パート2 『火垂るの墓』の製作現場
作画監督、美術監督、色彩設計など、現場のスタッフがそれぞれの立場から技術的なことや苦労した点などを語っています。
イメージボードと絵コンテが豊富に掲載されているのも嬉しいところ。イメージボードは完成されたカットとは違ってラフな色遣い。
これはこれで淡く優しい感じがして素敵でした。
パート3 作品の背景を読み解く
様々な立場の人が作品に対するエッセイを寄せています。そして教科書シリーズではお馴染みの大塚英志氏が今回も作品の解題を行っています。
感想
本書を読んで一番いいと思ったのは原作者の作品に込めた思いが知れたこと。
『火垂るの墓』は野坂氏の実体験が元になっていて、彼は小説と同じように妹を戦後に失っています。
妹を餓死させたことに強烈な罪悪感を抱いており、贖罪のためにこの小説が生まれたといっていいのかもしれません。
妹が死んだ時に自分も死んだと語っているのを読むにつけ、同情を禁じ得ないし、胸に突き刺さってくるものがありました。
僕は原作も他の作品も読んだことがなく野坂昭如のこともよく知りませんでした。
そこでネットで調べてみると、大島渚を殴っただとか、ダウンタウンやとんねるずとの関係が出て来て、ずいぶん破天荒というか無頼派な感じ。
本書のエッセイを読む限りでは、繊細で真面目な印象を受けましたが、実際は真逆だったようです。
過去に辛い経験をしたからこそ、破天荒な人物になったのでしょうか。
ジブリのアニメ映画『火垂るの墓』は日本だけでなく世界でも評価されています。
これから何年時が経っても観られ続けるでしょう。本書はそんな作品を知るための良い本でした。



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