
感想 ★★★☆☆
ホラーの名作として名が挙がることも多い作品。書いたのがホラー作家ではなく、恋愛小説などを書いている小池真理子というのが意外性があって驚きですね。
その片鱗は見えるのですが、本書は正当なホラー小説でした。
家を舞台にしたホラーは昔からたくさんありますが、本書のように近代マンションが舞台の本格ホラーは、当時としては珍しかったんじゃないでしょうか。
よくできたホラー小説だと思いました。ただ、いろいろ思うところもありました。
あらすじ
念願のマイホームを手に入れた加納一家。格安で売り出されていたそのマンションは小高い丘の上にあり、すぐ近くには大きな墓地があった。少々気にはなったものの、それ以外は申し分なく、この価格で購入するのは不可能な物件だった。
墓地のことは気にせず新生活をスタートさせた一家だったが、入居直後から不可解な出来事が頻発し始める。テレビの映像が乱れたり、エレベーターが止まったり、不気味な地下倉庫で視線を感じたり……。
そして他の住人たちは次々とマンションから去っていく。
次第にエスカレートしていく怪異に、加納家は精神的に追い詰められていく。このマンションにはいったい何が潜んでいるのか。
感想
じわじわと追い詰められる閉塞感や、日常が侵食されていく展開には恐怖を感じられ、ホラーの名作として名が挙がるのも頷けます。
あからさまに幽霊や化け物を出さずに嫌な感じを出しているところに好感が持てます。ただの安っぽいホラーとは違います。近代マンションを舞台にしながら、日本らしい昔ながらの恐怖を演出しようとしていてよかった。
終盤あたりで突拍子もない現象が起きたりして、これについては賛否がありそう。でも基本的にはしっとりした恐怖感です。
そういう良い点がありつつ、その一方で不満に感じる点もいくつかありました。
まず主人公一家に共感がもてない。夫婦と幼い子供一人、犬一匹という構成で、子供と犬には何の不満もありませんが、夫婦の人間性はあまりいいと言えません。
もともとは不倫の関係で、夫の妻が自殺したことにより後釜に収まった関係。この辺の男女のドロドロした関係をちゃんと書くのが、小池真理子らしさかもしれません(本書以外読んだことないのでわかりませんが)。
ホラー作家だとこういう書き方はしないでしょうね。
このことが今回の怪異と関わってくるなら別ですが、そんなことはないし、この二人のバックボーンをここまで書く必要があったのか疑問に思いました。
これらがしっかり書かれているせいで冗長に感じる部分が多かった。
そして決定的なのが後味の悪さ。
途中から夫の弟夫婦も巻き込まれてしまうのですが、彼らは何も悪くない。人間性に問題がある夫婦によって、関係ない人が酷い目にあうのは、読んでてあまり気持ちのいいものではないです。
さらに子供と犬がかわいそう過ぎる。この子達までこんな目に遭わせる必要があったのかと思ってしまう。子供たちだけでも助かっていればまた違った感想になったと思います。
例えば夫婦が何とかして子供を助けたとか、そういう展開であればドラマティックになっていたし、そうするためにわざと夫婦の人間性を悪くしたのかと納得もいく。
主人公の変化は物語の基本ですからね。
もちろん、ホラーが不条理なものとは承知していますが、それでも後味の悪さを感じてしまった。
さらにもう一点あげるなら怪異の理由、正体がわかりません。これについては僕はそこまで気になりませんでしたが、もやっとする人は多いかも。不条理感を出すためかもしれませんが、ある程度の説明はほしいところ。
あとがき
やはり主人公に共感がもてないと物語に入っていきづらいですね。ホラーとして面白いところがあるとしても、あまり好きな作品ではないかな。

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